2010年03月31日

<自立支援法訴訟和解>国と原告「共に考え」(毎日新聞)

 全国14地裁で71人が国を訴えた障害者自立支援法の集団違憲訴訟は24日、さいたま地裁で初の和解が成立した。1次提訴から11カ月後に政権が交代し、判決前に国が法律廃止を表明した「行政訴訟史上まれな裁判」(竹下義樹・原告弁護団長)は、障害福祉法制を大きく転換させるきっかけとなった。だが、財政難を背に、持続可能な新制度を確立する道のりは厳しい。【野倉恵】

 障害者福祉サービスは03年度、利用者がサービス内容を選び事業者と契約する「支援費制度」に転換した。支払い能力に応じた負担となり「障害者の意見を国が相当くんだ、一つの到達点」(障害者団体幹部)と歓迎された。

 だが、サービス量の急増で初年度から100億円超の財源不足になり、06年度、1割を原則自己負担する自立支援法が導入された。

 所得保障が十分でなく障害が重くなるほど負担も重くなる仕組みだったため、年金や福祉手当に頼る障害者を圧迫。福祉施設を営む事業者も、定員に応じて毎月支払われていた報酬が、利用実績による日割り計算となり、経営を圧迫された。原告第1号の秋保喜美子さんは「障害を『自己責任』とみなす仕組み」と批判した。

 長妻昭厚生労働相は就任4日目に同法廃止を表明。訴訟を支える障害者団体幹部らと旧知の山井和則政務官が「私もこの法律施行後、施設経営者の親友を亡くした。共に新たな仕組みを考えてください」と原告側に語りかけ、交渉を始めた。厚労省は負担実態を初めて調べ昨年11月、障害者の87%で月平均8518円の負担増が判明した。

 昨年12月には10年度予算案での低所得者の負担無料化を巡り、弁護団が政務官室で詰め寄る場面も。結局、ホームヘルプや車椅子修理などは住民税非課税世帯で無料化されたが、手術などの医療費に負担が残った。

 先行きに不透明感も残り、訴訟終結へ見通しがついたのは、今年1月7日の「基本合意調印式」の1時間前だった。

 ◇財源確保が緊急課題

 支援法は当面、新制度ができるまで継続する。低所得者の医療費の無料化が緊急課題とされるが、約200億円の財源が必要だ。

 縦割りだった身体、知的、精神の障害福祉を一元化して、精神障害をサービス対象に加えた点は、「支援法の長所としてくむべきだ」との関係者の指摘はあるが、基本合意では「障害者の意見を踏まえることなく、拙速に」導入されたと自戒する。新制度は、障害者やその家族が6割を占める政府の「障がい者制度改革推進会議」が議論の場。制度の谷間をなくすため、難病や発達障害、高次脳機能障害などを含めるか、障害の範囲も再検討する。メンバーの障害者団体幹部は「私たちは政府を批判してきたが、今後は批判覚悟で、国民に共感される議論をしないと」と話している。

 ◇障害者ら「新法見守る」

 原告の障害者や支援者らは閉廷後の集会で「本当に障害者のためになる法律ができるまで安心できない」と声をそろえた。

 地裁近くであった集会には約320人が参加。原告の中村英臣さん(41)の母和子さん(69)は「ひどい法律が廃止されて新法が動き出すまで、しっかり見守りたい」と決意を語った。【飼手勇介、町田結子】

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2010年03月30日

警察庁長官銃撃事件が時効=実行役特定できず−「被疑者不詳」書類送検へ・警視庁(時事通信)

 1995年3月、国松孝次警察庁長官(当時)が自宅マンションで銃撃され、重傷を負った事件は30日午前0時、殺人未遂罪の公訴時効(15年)が成立した。警視庁は「被疑者不詳」で書類送検し、東京地検は証拠物を精査した上で、不起訴処分にする。
 警察組織のトップを狙った前例のないテロをめぐり、同庁南千住署捜査本部は延べ約48万人を投入。オウム真理教の組織的犯行とみて容疑者逮捕に全力を挙げたが、実行役を特定できず、真相は闇に包まれたままだ。
 国松長官は95年3月30日午前8時半ごろ、東京都荒川区南千住のマンション前で、背中や腹部など3カ所を撃たれ、重傷を負った。
 捜査関係者によると、96年5月、教団信者だった元同庁巡査長(44)が「自分が撃った」「拳銃は神田川に捨てた」と述べ、事件関与を認めた。
 しかし、元巡査長の供述はほとんど裏付けが取れず、神田川で拳銃は見つからなかった。元教団幹部数人が現場にいたとも話したが、いずれも関与を否定した。
 捜査本部は2004年7月、事件関与の疑いが強いとして、殺人未遂容疑などで元巡査長ら4人を逮捕したが、供述は変遷し、不起訴となった。
 その後の捜査で、元巡査長のコートや眼鏡、マスクなど複数の所持品に火薬成分が付着していることが判明。捜査本部は元教団幹部らの事情聴取を続けたが、銃撃を直接的に示す証拠はなく、状況は打開できなかった。 

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2010年03月27日

壁画どこへ行く 高度成長期の最先端「西長堀アパート」(産経新聞)

 高度成長期のモダンな建築として知られる「西長堀アパート」(大阪市西区)で、戦後の前衛グループ「具体美術協会」のリーダー、吉原治良さん(1905〜72年)の壁画が忘れ去られた状態になっている。アパートそのものも耐震基準の問題から入居募集を中止。近く建て替えか、補修かの結論を出さなければならず、壁画の取り扱いの決断が迫られている。吉原さんは戦後の抽象絵画の牽引(けんいん)者として欧米でも著名で、美術関係者からは「公的な美術館への寄贈などを考えてほしい」との声が上がっている。

 壁画は昭和33(1958)年、吉原さんが具体のメンバーらに指示しながら約4カ月間にわたって制作。サイズは縦約2・5メートル、横3・8メートルで、フランス、イタリア、ポルトガルなど色の違う世界各地の大理石や御影石などを張り付けている。当時、玄関ロビーで目立つ場所にあったが、現在は仕切りが新たに設けられて談話室になり、壁画の前には卓球台やいすが並べられている。

 アパートは、同じ年に総戸数263戸として日本住宅公団(現・UR都市機構)が建設。各戸に「水洗式洋風便所」「タイル張りのバスルーム」「バルコニー」が設置された当時の最先端の建物だった。作家の司馬遼太郎さんや、女優の森光子さんら文化人も多く住み、当時のパンフレットには森光子さんが登場。「1階ロビーの壁には吉原治良先生の力作が描かれているとか。これやったら一流ホテルばりやわ」と言葉を寄せ、壁画が話題だったことが分かる。

 ただその後、約50年間にわたる入居者の入れ替わりなどで壁画の存在は徐々に忘れ去られ、平成18年3月には耐震基準の問題から入居募集を中止。現在では空室が増え、作品の価値を認識している住民も少なくなっている。

 UR都市機構西日本支社(大阪市城東区)は、「壁画の取り扱いについては現段階では決まっていない。ただ、価値のあるものだという認識はしており、できるだけ残したい」としている。

 当時の資料をもとに作品を見つけ出した「具体」のメンバーだった造形作家の今井祝雄さんは「吉原さんが生きていたら『何とかならんのか』と悲しんでいたと思います。もっと街の中のパブリックアートを大切にしてほしい」と話している。

 ■公立の美術館で保存を

 大阪大学総合学術博物館の橋爪節也教授(美術史)の話「大胆な構成が『具体』の指導者として世界に注目された吉原らしい作品だ。当時は日常生活に溶け込んだ作品で社会にアピールすることも、美術家には魅力的だったのだろう。大阪には思わぬところに著名な美術家のモニュメントやレリーフなどの作品が残されており、公立の美術館で保存し、公開されるべきだ」

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